長い歴史をもち、世界中で愛飲されているコーヒー。
近代においては、カフェなどのコーヒーを嗜むパブリックなスペースに、
知識人や芸術家が集まったことも知られており、アートともゆかりの深いものです。
現代においても、その味わいはもちろん、香りによるリラックス効果や眠気覚ましなどが期待され、
私たちの日常に欠かせない存在となっています。
紙やプラスチックの容器も便利ですが、
やはりコーヒーを味わうためにつくられたコーヒーカップでいただくのは格別でしょう。
コーヒー同様、カップにもまた、奥深い世界が広がっています。
今回B-OWNDでは、アーティストが手掛けるコーヒーカップの特集を開催します。
工芸ならではの「使えるアート」として、各アーティストがそれぞれにこだわった作品を、
ぜひご覧ください。
B-OWND Magazine特別企画
人気カフェのバリスタに聞く!コーヒーカップによる味わいの変化とは?
B-OWND Magazineでは、この企画に合わせて、東京・乃木坂エリアにある人気カフェ「Little Darling Coffee Roasters」のバリスタ・赤川直也さんに、コーヒーカップの形による味わいの変化や、プライベート空間でコーヒーを楽しむ醍醐味について伺いました。
ぜひご一読ください。
※記事の公開は2022年10月7日(金)17時です。
世界の神秘に魅せられたアーティスト、ノグチミエコと今村能章。
ノグチは、未知の世界・宇宙をモチーフに、惑星が巡る様子を表現したグラスやポットを、今村は、「もし信長や秀吉がエスプレッソに出会ったなら」という想像から生まれたエスプレッソカップを出品。
アーティスト:ノグチミエコ・今村能章
白磁をいかしたモノトーンのカップと花器
白磁の美しさをいかした、モノトーンのコーヒーカップと花器。
高橋奈己は、種や実などを抽象化し彫刻的なシルエットのカップを、
井上祐希は、カップの底を高く重ねたり、取っ手がカップを貫通していたりと、
さりげない仕掛けを取り入れています。
シンプルながらアーティストの個性が光るコーヒーカップです。
アーティスト:高橋奈己・井上祐希
アーティスト:井上祐希
「今までにないもの」を追い求めるアーティスト・横山玄太郎。
今回のコーヒーカップのテーマは、”茶碗とコーヒーカップの間の子”、その名も「チャーピーワップ」です。茶碗にごく当たり前にある器の歪みと、両手で持って頂くという所作の特徴をコーヒーカップに落とし込んだ、横山らしいユニークでポップなカップです。
アーティスト:横山玄太郎
ストリートカルチャーの精神と有田焼の融合
井上祐希は、400年の歴史を持つ陶磁器の産地、有田の出身。人間国宝を有する萬二窯の三代目である。井上は、ストリートカルチャーの歯に衣着せぬ物言いやハングリー精神、色彩感覚、ファッションに魅せられ、作品にその片鱗を見せ始めている。井上が作品によく用いるのは、「釉滴(ゆうてき)」と呼ばれる技法。筆にたっぷり釉薬をふくませ、あえて筆をコントロールせず、無意識に浮かび上がる模様の、偶然性・即興性を楽しむ作風が持ち味である。
アートとクラフトの中間を目指す錬金術師
今村能章は、沖縄を拠点に活動する陶芸家。幼いころから「未知のもの」に強く惹かれたという今村は、アーティストになった現在も、神秘的な雰囲気の作品を制作している。カップの取手にドアノブを取り付けるというユニークな発想の《ドアノブカップ》、顔の連なりがはがれていくさまを表した《脱皮》、重力によって下に垂れる釉薬をステムとした《釉脚盃》など、独特の感性を発揮した唯一無二の作風が人気を集めている。
アシンメトリーな造形美を追求
高橋奈己は、果実やつぼみなど、自然が生み出すアシンメトリー(非対称)な造形の美しさに魅せられて以降、継続してそれらをモチーフに作品を制作している。理想の造形を創るために、モチーフである非対称な形の「果実」を抽象化し、磁土で複雑な形を作り上げられる『鋳込み』という技法で制作する。清らかで優美な品格をもつ作品には、国内外から熱い視線が注がれている。
世界の神秘に魅せられたガラスアーティスト
宇宙や自然、生命に魅せられたノグチは、その繊細な感性を通して見つけた「世界の神秘」を、ガラスならではのみずみずしい輝きをもって表現する。代表作《10ˣm Where are you ? 》シリーズは、手のひらに納まる球体に、宇宙のひとつの姿を閉じ込めたもの。宇宙をすくうように抱えて俯瞰するという、現実にはありえない状況が実現されている点に作品の面白さがある。近年では「宇宙を呑む」をコンセプトとした酒器のシリーズも人気。
ポップに弾ける陶芸
アメリカで陶芸を学んだ横山の作品は、いい意味で日本の伝統工芸のイメージを感じさせない。水玉やストライプによるポップなリズム感、まるで人格をもって動き出しそうな生き物のような器など、カラフルで自由な遊び心がさまざまにちりばめられている。横山は「誰も見たことがないものを生み出す」という信念のもと、人々の日常に「ささやかな楽しみ」を与えられるような作品を日々発想し続けている。