日本人は、水源に恵まれた農耕民族として、
生きるために必要なものがすべてそろった状態で暮らしていました。
そのため、日常のなかに当たり前にあるもの、
つまりは「自分たちの生活環境に対してどう向き合うか」ということを、
一つの流派として考えるようになりました。
これが「茶道」の起源です。
慌ただしい日常のなかで、自分と向き合う時間はとれていますか?
長い歴史や精神性を持つ「お茶」は、そのよいツールとなるでしょう。
何かから逃れたり怠けたりするためではなく、
有益な休息として一服のお茶を点てること、それはとても前向きな行為です。
今回の特集では、さまざまな人気アーティストの茶碗をご紹介します。
あなたにとっての至高の茶碗で、日々の休息を「味わう」ひと時を過ごしてみませんか。
B-OWND Magazine特別企画
「 茶道家・岩本宗涼氏に聞く!茶碗コレクションのススメ」
茶道にはそんなに詳しくないけれど、お茶碗を購入してみたい。
でも、どうやって選べばいいだろう?そして、購入したお茶碗はどうやって楽しめばいいのだろう?
この疑問について、茶道家・実業家として活躍するZ世代の茶人、岩本宗涼さんに伺いました!
岩本さんのお茶碗のコレクション紹介とともに、お茶碗選びのコツや楽しみ方についてお話いただきます。
千利休の弟子として知られる、古田織部と小堀遠州。加藤亮太郎は織部、松林豊斎は遠州と、それぞれがこの流れを組む茶陶に取り組んでいます。二人が手掛けるのは、時代を超えて受け継がれてきた価値観に、自らの解釈を踏まえた現代的なエッセンスを加えた茶碗です。
アーティスト:加藤亮太郎・松林豊斎
ともに自然の美しさに魅せられたノグチミエコ、高橋奈己。ノグチミエコは宇宙や海の神秘的な美しさを、高橋奈己は蕾や果実のシンメトリーな造形美を、それぞれの素材「ガラス」と「磁土」をいかして表現しています。
アーティスト:ノグチミエコ・高橋奈己
それぞれが独自の美を追求し、新しい陶芸のあり方を模索し続ける二人のアーティスト。市川透は「アートと工芸の融合」を掲げ、力強くもラグジュアリーな美を、山浦陽介は「デザインと工芸、そしてアート」のジャンルを横断し、まるで建築物のような緊張感のある美を追求しています。
アーティスト:市川透・山浦陽介
それぞれが個性豊かな作品を発表する3名のアーティストの茶碗。「陶」という素材を使用しつつも、アプローチが全く異なる点が見どころです。おもてなしに使えば、話題を生むこと間違いなし。
アーティスト:酒井智也・宮下サトシ・横山玄太郎
「アートと工芸の融合」をめざす
市川は独立以来、「アートと工芸の融合」を掲げ、自由な造形と独自の釉薬の研究の成果をもとに、従来の焼き物のイメージを覆すような作品を生み出し続けている。その作風は、熱い血が流れるような赤や、スタイリッシュでメタリックな黒や金銀といった光彩、そして、大地のエネルギーを感じさせるような荒々く力強い造形が特徴。近年では、空間デザイナーやジュエリーブランドとのコラボレーションなど、陶芸家という枠組みにとらわれない活動を展開し注目を浴びている。
「茶陶を深く理解する陶芸家」
加藤は、千利休の弟子である古田織部の流れを汲む茶陶を制作している。伝統的な穴窯焼成による美濃桃山陶に正面から向き合いながらも、作品にはコンテンポラリーなエッセンスを盛り込んでいる。また自身も、20年にわたって茶道を嗜む茶人であり、茶陶を深く理解する陶芸家として定評がある。近年では、書家としても活躍の場を広げている。
「記憶や認識に作用する作品を生み出す」
酒井は、ロクロに向かって無意識に手を動かし、そこで浮かび上がってきた自らの記憶のなかのイメージを形にする。そうして出来上がった様々なパーツを組み合わせることで、どこか既視感のある抽象的な形を作り出している。しかし酒井は、あえてその既視感をズラすような脈絡のない色彩を施しており、静かに人間の「認識」を問うている。近年では、他人の記憶を残すことをテーマにした「記憶を救う」シリーズの制作も始めている。
「アシンメトリーな造形美を追求」
高橋は、果実やつぼみなど、自然が生み出すアシンメトリー(非対称)な造形の美しさに魅せられて以降、継続してそれらをモチーフに作品を制作している。理想の造形を創るために、モチーフである非対称な形の「果実」を抽象化し、複数のパーツに分けて鋳込(いこ)むという手間のかかる工程により制作する。清らかで優美な品格をもつ作品には、国内外から熱い視線が注がれている。
「世界の神秘に魅せられたガラスアーティスト」
宇宙や自然、生命に魅せられたノグチは、その繊細な感性を通して見つけた「世界の神秘」を、ガラスならではのみずみずしい輝きをもって表現する。代表作《10ˣm Where are you ? 》シリーズは、手のひらに納まる球体に、宇宙のひとつの姿を閉じ込めたもの。宇宙をすくうように抱えて俯瞰するという、現実にはありえない状況が実現されている点に作品の面白さがある。近年では「宇宙を呑む」をコンセプトとした酒器のシリーズも人気。
「400年の歴史を引き継ぐ、京都宇治の陶芸家」
千利休の弟子として活躍した、小堀遠州の流れを汲む「朝日焼」。枯れた風情や渋みなどをよしとする「さび」のなかにも、華やかさや優美さのある趣・ 風情を表す「綺麗寂び」を表現の軸におく。松林は、ブルー、焦げた茶色、白い化粧土という3色構成を、その「綺麗寂び」の独自の解釈として発表している。ほか、京都を拠点に伝統工芸のさらなる可能性を探る「GO ON」に参加するなど、現代の工芸のあり方を模索し、発信する活動も積極的に行っている。
「サイケデリックでヴィヴィッドな世界観」
宮下の作品は、ヴィヴィッドでサイケデリックな世界観が特徴的。アメリカのカートゥーンアニメーションからの影響もあり、作品には、しばしば架空の生き物たちが登場する。近年では、陶芸にアニメーションのさまざまな要素を取り入れた作品や、「瞑想」をテーマにした茶碗《vortex tea bowl》などを発表し、そのユニークなコンセプトが特に若い世代に反響を呼んでいる。
「デザインと工芸、そしてアートを横断する」
山浦は、デザインと工芸、そしてアートという、近いようで遠いそれぞれのカテゴリーを横断するアーティスト。大学でプロダクトデザインを学んだことから、芸術的なものを機能的に考え、機能的なものにも芸術性を見出すことが習慣となっていった。プロダクトデザイナー、アーティスト、そして職人が一体化したジャンルレスの作品を生み出すことを目指した結果が現在の作風に繋がっている。
人工と自然、それぞれに備わる無駄を省いた緊張感ある造形美。現代建築のような水平と垂直が多様に重なり、絶妙なバランスが創造されている。
「ポップに弾ける陶芸」
アメリカで陶芸を学んだ横山の作品は、日本の伝統工芸のイメージを感じさせない。水玉やストライプによるポップなリズム感、まるで人格をもって動き出しそうな生き物のような器など、カラフルで自由な遊び心がさまざまにちりばめられている。横山は「誰も見たことがないものを生み出す」という信念のもと、人々の日常に「ささやかな楽しみ」を与えられるような作品を日々発想し続けている。