B-OWND Magazine特別企画
日本における白い器の歴史ー志野、磁器の登場から現代アートまで
B-OWND Magazineでは、企画に合わせて、日本における白い器の歴史と、今回の企画に参加するアーティストの作品をご紹介します。
実は、日本で初めて真っ白な器が焼かれたのは、江戸時代のことでした。では、それ以前、日本に白い器はなかったのでしょうか?
昔と今、「白」に魅せられた日本人たちをめぐるストーリーをひもときます。
白は、主役にも引き立て役にもなれる特殊な色です。
シンプルな白一色の作品は、素材のテクスチャーや造形を際立たせ、
それぞれのアーティストの個性を光らせます。
また、白の素地は、他の色彩を美しく引き立たせてくれます。
「曲線的なアプローチ」
グラデーションある陰影を楽しむ高橋奈己の洗練された作品と、
作品ごとに素材のさまざまな表情を引き出す横山玄太郎のユニークな作品をご紹介します。
アーティスト:高橋奈己・横山玄太郎
アーティスト:山浦陽介
アーティスト:井上祐希・横山玄太郎
夏といえば、見た目に涼しいガラスの器が人気。
ガラスアーティスト ノグチミエコが手掛ける、宇宙をモチーフにした酒器・アイスコーヒーグラスなどをご紹介します。
アーティスト:ノグチミエコ
素材のテクスチャーと造形を追求した作品です。
冷たく光るシルバーの酒器など、この時期におススメの作品をご紹介します。
アーティスト:横山玄太郎・山浦陽介
ストリートカルチャーの精神と有田焼の融合
井上祐希は、400年の歴史を持つ陶磁器の産地、有田の出身。人間国宝を有する萬二窯の三代目である。井上は、ストリートカルチャーの歯に衣着せぬ物言いやハングリー精神、色彩感覚、ファッションに魅せられ、作品にその片鱗を見せ始めている。井上が作品によく用いるのは、「釉滴(ゆうてき)」と呼ばれる技法。筆にたっぷり釉薬をふくませ、あえて筆をコントロールせず、無意識に浮かび上がる模様の、偶然性・即興性を楽しむ作風が持ち味である。
アシンメトリーな造形美を追求
高橋は、果実やつぼみなど、自然が生み出すアシンメトリー(非対称)な造形の美しさに魅せられて以降、継続してそれらをモチーフに作品を制作している。理想の造形を創るために、モチーフである非対称な形の「果実」を抽象化し、磁土で複雑な形を作り上げられる『鋳込み』という技法で制作する。清らかで優美な品格をもつ作品には、国内外から熱い視線が注がれている。
世界の神秘に魅せられたガラスアーティスト
宇宙や自然、生命に魅せられたノグチは、その繊細な感性を通して見つけた「世界の神秘」を、ガラスならではのみずみずしい輝きをもって表現する。代表作《10ˣm Where are you ? 》シリーズは、手のひらに納まる球体に、宇宙のひとつの姿を閉じ込めたもの。宇宙をすくうように抱えて俯瞰するという、現実にはありえない状況が実現されている点に作品の面白さがある。近年では「宇宙を呑む」をコンセプトとした酒器のシリーズも人気。
ポップに弾ける陶芸
アメリカで陶芸を学んだ横山の作品は、いい意味で日本の伝統工芸のイメージを感じさせない。水玉やストライプによるポップなリズム感、まるで人格をもって動き出しそうな生き物のような器など、カラフルで自由な遊び心がさまざまにちりばめられている。横山は「誰も見たことがないものを生み出す」という信念のもと、人々の日常に「ささやかな楽しみ」を与えられるような作品を日々発想し続けている。